シュークリームの夢2

私たちは今、コロナ禍、ロシアのウクライナ侵略という、まさかの連続の中に立たされています。
この悲劇は、主義主張の違いにかかわらず、否応無く世界に不安と混乱を与えていますが、一方で、近年これ程までに生きることの意味と生き方が一人一人に突きつけられて、リアルに考えさせられる時は無かったように思います。
さて、前回は、以前私が見たシュークリームの夢、のおはなしを紹介させていただきました。
お読みいただいた皆さんの謎解きはいかがでしたでしょうか?
夢には意味があると言われているように、私にとってあの夢は、今となっては意味大ありでした。
まず光に満ちた深黒の宇宙に浮かぶタージマハル、この意味は永遠の次元という以外、今もまだよく分かりませんが、その前に止まった列車に乗ってこの地上に降りてきて、尚且つそのまま地下に降りて行くトンネルを走り、駅に止まって降りたプラットフォーム上の赤絨毯については、私が出発した永遠の次元からこの地上に降りてきて、長い世俗のトンネルの中を通過するうちに、親からの影響、地域や業界、さらに時代の影響をたっぷり受け、この世の最高の身分に強力に引かれるようになって、国会に繋がる駅で降りた、と納得しています。
つまり何故「国会駅」で降りたかと言えば、それはこの夢を見た頃、まだ20代の私には政治的な意味ではなく、社会的な地位の象徴的な意味合いでの、つまり出世欲の行き着く果ての大臣という、非常に世俗的な願望、上昇志向に染まってしまっていた選択だったのだと思います。
だから、大臣になりたい一心でその国会の控室に入って行ったら、机の上にフレンチホルンがあったので、迷わずホルンを持って大臣席に出て行ったのも、夢の中ではオーケストラの各パートが各大臣のポジションになっていたからで、その地位に就きたい、ただその想いに突き動かされての行動でした。
でも何故かマウスピースが無かったので慌てて控室に探しに行って、そこにアルトサックスがあったのでそれを持って大臣席に引き返したのも、担当する仕事などどうでもよくて、ただ大臣の地位に就きたかっただけの選択だったように思います。
でもそのアルトサックスもダメで、焦ってまた他の楽器を取りに戻ったら何も無かった。
その時開いた反対側のドアの向こうは、真っ暗な階段が下に降りている。それに気づいた時、ここで私の中に眠っていた、助けなければ、という、あの深黒の宇宙にいた時に決意した記憶が蘇ってきたのだと思います。
階段を降りて行くと真っ暗な中に人の気配があり、その前にベルトコンベアに乗せたシュークリームが回っていた。
ここで一旦夢から離れて、その頃の私が悩んでいた現実の話になりますが、
私の心には、音楽は人々を幸せにするグレードの高い仕事でなければならないという、言わば建前のプライドがありました。
しかし一方には、いくらきれいごとを言っても、食べていけなきゃ何の意味もないという、世知辛い本音がありました。
建前で作る歌は聴き心地はいいものの、グッと心に響いてきたり、染み込んできたり、ましてや感動が溢れたりするような説得力はありませんでした。
一方、本音で作る歌は露悪的な方向に向かっていって、それなりの説得力があり、共感は起きるのですが、聴いた後、お互いの心に残るものは、自己憐憫の情であったり、自分の不満や怒りは正しいという、自己愛の強い、暗い情念のような感情であったりしました。
しかし私は内心、そのどちらでもなく、心から感動する歌はどうすれば創れるのか、ともがいていた時期でした。
ここでもう一度夢に戻りますと、夢の中の私は、階段の下の暗闇を見たその瞬間、生まれてきた理由とその情動が、ドバッと心に溢れてきたのだと思います。
つまりシュークリームとは、生きている意味を見失って、ニヒリズムに呑み込まれながらも、その記憶喪失の心の奥底では、懸命に自らの本性への回帰を希求していて、その心のうずきが無意識のうちに作っていた、純粋な生命の結晶が現象化したものではなかったかと思うのです。
ムチを持ち、私を睨みつけ、後に白衣の天使のような美しい姿に変身した女性は、その人々を救うために、危険を承知で暗闇に飛び込んできた救助隊員、そして私は、皆さんに元々の歓びを思い出してもらうためにこの暗闇を目指して飛び込んできた応援団員であった事を思い出したのだと思います。
こうして夢の謎が解けてくる中で、私は人生を選択し、その道を歩みながら、夢の意味がより鮮明になっていく経験を重ねて、現在進行形の私があると感じているところです。
さて、いかがでしたでしょうか、
きっと皆さんお一人お一人にも忘れられない夢の一つや二つはあるのではないかと思います。
それらの夢の中には、今も人生の選択に重要な示唆を与えてくれている夢があるかもしれませんね。
シュークリームの夢を見てから少し後に、具体的に夢の影響を受けた出来事が起きました。
その出来事は、最初に起きたその後の人生の分岐点となりました。
そのお話はまた次回に預けたいと思います。
次回もよろしくお願い申し上げます。

羽岡仁

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